日本フォーカシング協会

会長挨拶

会長 久羽 康

 2025年4月より会長を務めさせていただくことになりました、久羽康(くば やすし)と申します。日本フォーカシング協会は、いよいよ法人への移行という節目を迎え、新たなスタートを切ることとなりました。しかし形がどうであれ、本協会はこれまでと変わらず、フォーカシングに関心を持つ人たち、フォーカシングの実践に意味を感じている人たちが、自由に集まり、交流する場であれたらと思っています。皆さま、どうぞ引き続き、本協会をよろしくお願いいたします。

 フォーカシングは心理療法の効果に関する研究からうまれましたが、心理療法家やカウンセラーが使う専門技法ではなく、誰でも自分自身のために学ぶことのできるものです。本協会の特色は、専門家の集まりではなく、広くフォーカシングに関心を持つ人の集まりである、というところにあります。多くの人にフォーカシングという実践に触れていただくことは本協会の大きな目的のひとつです。提唱者であるジェンドリンからさまざまな人の手に受け継がれ広がってきたこのフォーカシングという営みが、皆さんが自分らしく生活をしていく役に立てるとしたら――皆さんがフォーカシングに触れる中で、自分の気持ちに穏やかに誠実に触れることの意義を再発見するとしたら――、それは、これまでこの実践を受け継いできた人たち皆の願いなのです。フォーカシングは心理療法に携わる専門家にはよく知られていますが、そうでない方々には現在のところ、(たとえばマインドフルネスのようには)広く知られているとは言えません。本協会が、多くの人がフォーカシングのシンプルな奥深さに触れる縁を作り出せることを、そしてフォーカシングを知った人がお互いとの関わりの中でさらに自分自身とのつながりを深めていく場所となることは、私自身の願いでもあります。

 さて、私の会長としての任期のあいだに、フォーカシング界ではいくつかのアニバーサリー・イヤーを迎えます。2026年はジェンドリン生誕100年の年。そして2027年は日本フォーカシング協会発足30周年の年です。こういった数字はそれ自体が意味を持つわけではないかもしれませんが、先達が真剣に人間の生きるプロセスについて考え、さまざまな思索と実践と協働を重ねてきた年月の上に、いま私たちが属している豊かなフォーカシングの文化があるのだということを、思い返す機会を与えてくれます。ああ、私たちはこういうことを大切にしてきたんだなあと過去に思いを馳せることが、いま現在の場で、私たちが次の一歩へと進展していくことの基盤となってくれるのではないかと思います。その基盤の上で、日本におけるフォーカシング・コミュニティという(いうなれば)ひとつの有機体が歩んでいく、その次の一歩を、皆で豊かに感じ取り、動いていけたらと考えております。