日本フォーカシング協会

会長挨拶

会長 森川友子

 2022年4月1日より会長に就任しました森川友子でございます。日本フォーカシング協会は、フォーカシングをたのしむ人、仲間と繋がりたい人のホームグラウンドとして機能してきました。歴代の先輩方の後を引き継いで会長を務めさせていただくことは、私にとって、お預かりした大きな生き物を眺め上げる感覚であり、その責任の重さを、からだの各所で感じております。副会長、事務局長をはじめ、頼りになる運営委員の方々のお力を得て、3年間、誠意をもって尽くしていきます。

 フォーカシングは特に1978年のジェンドリン来日をきっかけにして日本全国に広がり、各地域で勉強会やワークショップが行われておりました。やがてそれらのコミュニティが母体となって、1997年に日本フォーカシング協会が発足しました(詳しくは、本協会の「日本フォーカシング協会の成り立ちからこれまで:発足20周年を迎えて」をご参照ください)。

 その頃大学院を出たばかりの私が、九州から会合に出向いてペアフォーカシングをすると、本州の人から「あなたのフォーカシングは長すぎる。ふつうリスナーは、20~30分で終わらせるものだ」と言われ、びっくりしたのは楽しい思い出です。そうした地域カラーは有りながらも、フォーカシングらしい温かさや静かな優しさが、どの人にも、どの人とのやり取にもあり、集まるだけで楽しいと感じました。協会はやがて、諸先輩方がニュースレターを設け、ホームページを整え、会則に則って年次大会で総会が開催されるようになりましたが、今も昔も人と人との間の尊重が、しっかりと厚く、土台にあるように思われます。

 協会の最大の特徴は、何事もフォーカシングの精神に照らして営まれていることです。その顕れは、吟味された言葉の中にも見ることができます。年に1回の会合は「フォーカサーの集い」、年に4回の会報は「フォーカサーズ・フォーカス」、これらの名称には、すべての人がフォーカシングを体験する側(フォーカサー)であり、対等であるという精神が含まれています。

 また、運営組織にも特徴があります。協会には、ニュースレター編集グループ、国際交流グループ、教育研修グループという3つのグループがあります。そこでは、職業・経験問わず、主体的に協会メンバーが力を出し合って運営を行っています。各グループはメーリングリスト等でつながり、時々オンライン上の集まりを持ちながら仕事や情報交換をします。つまり運営グループ自体が緩やかなコミュニティです。

 このようなメンバーの運営活動により、協会は、フォーカシングの機会に関する情報の集約・発信機能、メンバー間の交流機能を着実に果たしてきています。協会ウェブサイトをご覧いただくと、協会が協賛するワークショップの情報や、海外のフォーカシング記事へのリンクが整理されているのがご覧になれます。会報「フォーカサーズ・フォーカス」ではさらに、仲間募集、個人セッション情報、自由投稿が豊かに掲載されています。協会には助成事業もあり、フォーカシングに接することができにくい地域について、講師派遣の助力を行っています。

 現在、この協会にとっての発展的目標があるとするならば、まず、会の充実と外部発信が挙げられるかもしれません。協会に入ったメンバーが、楽しい、入って良かったと、今以上に感じるような協会作りができれば理想であり、そのことが外部発信にもつながるでしょう。更なるアイデアを出し合っていきたいところです。

 2つ目の課題として、時代に即した組織へのアップデートがあります。法人化、業務委託の拡張といった方向性が考えられ、検討の土台を内田前会長が作ってくださいました。協会の運営は全員、ボランティアです。誰もがもっと気軽に協会にかかわり、協会を良くするたのしさを体験できるよう、ふさわしい組織の在り方について考えていきたいものです。もちろん、年会費の安さや、手作りによる創造性も協会の良さの一つではありますので、何をどうするかについては十分に話し合っていかなければなりません。

 こうしている間にも、世界では国と国との争い、家庭では人から人への虐待、社会では心の抹殺、あらゆるところで不和や心身への暴力が後を絶ちません。フォーカシングをする人がフォーカシングを続けていくこと、そして一人でも多くの人にフォーカシングを知っていただき、体験をしていただくことが、一人一人の幸せ、全体の幸せと平和につながることでしょう。フォーカシングが今日も、銘々の糧となり、社会の一滴となるよう、本協会が社会的役割を果たしていけたらと思います。